東大法科大学院09年度再現答案等・法律科目1(構成のみ)

※大体の内容です。条文は省略しています。本番の試験では初出についてのみ「民法○条」、「民事訴訟法(以下民訴法とする)○条」といった形で書き加えています。

<こんな感じ>
・所要時間:70分ぎりぎり。(1)(2)の構成&記述で40分弱。
・分量(字数):(1)が表面の三分の二、(2)が同三分の一、(3)が裏面の四分の三
・点数:86点

(1)
AC間で売買契約を締結することでCに土地の所有権が移転する。
CがBに、賃貸借契約に基づき賃料を請求するには、Aより賃貸人の地位を受け継いでおり、それをBに主張できることが必要である。
かかる主張ができるといえるには、AC間での契約上の地位移転の合意があった上で、更にCが所有権移転登記を要するという見解と、債権譲渡における通知を要するという見解がありうる。すなわち、これは賃借人の賃料二重払いの危険を防止することを目的として、いかなる要件を備えれば賃料を請求できるかを論じるものであるが、前者は登記を有するものが所有者である蓋然性の高さに着目しているのに対し、後者は地位移転を賃料債権の包括的譲渡に見立てて、債権譲渡の条文を準用したものである。
登記まで要求するのは費用等の面から新たな賃貸人に過度の負担を課すものと思えなくもないが、競売等によりまったく見ず知らずの新賃貸人が現れた場合がありうることやを考えると、たとえ賃借人に478条による保護を受けうる可能性があるとしても、前者が妥当であると考える。
以上より、CがAと土地売買契約を締結し、賃貸借契約の地位移転の合意をした上で、当該土地の所有権移転登記を得ればよい。
なお、契約上の地位移転に関しては、通常相手方の承諾が必要と解すべきではあるが、賃貸借契約における賃借人の承諾は、賃貸人の債務が没個性的であることから不要であると考える。

(2)
賃貸借契約の賃貸人の地位移転については、上記のとおり賃借人の承諾は不要であると解する。すなわち、賃貸借契約において、賃借人には誰が債権者であるかについては通常保護されるべき利益は認められない。したがって、両当事者間で特段の合意がない限り、賃貸人はその地位を譲り渡すことができることとなる。ただし、たとえば十年間は賃貸人が交代しないなどといった合意ないしそれと同視しうるような事情があれば、それは契約内容となるから、両当事者を拘束するから、そのような場合における無断での賃貸人の地位移転は、債務不履行となりうる。とはいえ、賃貸借契約は両当事者の信頼関係を基礎とするのが通常だから、単に信頼関係があるといった事情からかかる合意を広く認めることはできない。
したがって、本問Bの異議は通常は単なる不同意を示したものと解すべきであり、上述のような合意がある場合には、Aの債務不履行を言うものとなる。なお、BにとってAが旧知の者であるといった事情のみでは合意を認定することはできないと考える。

(3)

調書に記載された和解の効力は確定判決と同じであるから、既判力ないしそれに類似した効力が発生する。
したがって、既判力が及ぶ当事者間では、前訴での基準時における訴訟物についての判断に矛盾する主張は遮断され、後訴でそのような主張をなしえない。
本問において、前訴での訴訟物はBC間における賃貸借契約関係の存在であるが、存在することが和解調書に記載されている。したがって、それと矛盾する主張はなしえない。ゆえに、Bは基準時におけるCの賃貸人たる地位を争うことはできない。
ただし、基準時以降に生じた事情については別論である。

②(記憶があいまいなのでおおざっぱです)
和解とは、訴訟行為である。なぜなら民事上の効力しかないとすると云々。しかし、その性格から直ちに結論は出ない。和解の性格から考えるべき。お互いに譲歩があるのが通常。したがって、その譲歩を後になって覆すような結論は認められない。これを和解の訴訟法上の効力から考えると、和解に認められる既判力について、その安定性確保の必要から、簡単にそれを覆すような錯誤を認めることはできない。しかし、既判力も手続保障を前提とするのであるから、期待可能性による調整を認めてしかるべきである。よって、当事者の責めに帰すべきでないことから生じた重大な錯誤については、和解において主張する期待可能性がなかったものとして、錯誤に基づき既判力の例外を認め、本問Bの主張を認めることもできると解する。


B社の取締役Dに代表権限がなかった場合、その行為は無権代理となり、その効果が会社に及ばないのが原則である。しかしながら、これを広く認めると、取締役等の権限を信用し、会社と何らかの関係に入ったものを害する。したがって、かかる原則は、善意者保護のため修正される必要がある。
これはすなわち、B社が正当な代表者に訴訟を追行させる利益と、Cの手続保障の比較衡量の問題である。一般に会社の外部者にとって、内部者たる取締役等がいかなる権限を有しているかは簡単にはわからないのが通常である。それゆえ、実定法上、内部者の権限を信じ、取引相手が会社であると考えた者の第三者保護規定が存するのである(会社法349条5項など)。そして第三者保護の必要性は、取締役のなした行為が訴訟法上のものであろうがなかろうが同様である。
そこで、Cが登記を調べた上で、Dが取締役との登記があったのであれば、908条1項により保護され、そうでなくとも、Dに代表権限があると信ずるにつき、正当な事由があればCを保護すべきである。したがって、Dの代表権限がないことにつき、Cが善意無過失であるといった事情があれば、Cの保護を優先する。
そして、DにB社の代表権限がないことは、基準時における訴訟物の判断とは矛盾しないので、既判力による遮断を受けず、信義則ないし争点効による遮断がある場合はともかく、主張自体は可能である。しかし、上記のようにCがDの権限がないことにつき善意無過失であるなどの事情があれば、そのような主張は認められない。

以上


<試験中考えたこと>
とりあえず一科目目は去年の反省を生かしてダッシュでやろう。
(ぱっと見で)えーまた賃貸借かよ!しかも和解とかマイナーすぎるだろwてか重点講義のノート作ってないとこがピンポイントで出るとかないわー…にしても契約上の地位移転にしろ和解にしろ発展問題出すなんて酷いw去年よりはるかに難しいじゃないか…
((1)を見て)え、登記じゃないの?それ以外の学説知らないんですけど。まあ契約の相手方の保護だから、債権譲渡の通知を流用すればいいのかな。理屈は適当にこねくり回すか…
((2)を見て)論点出さないとかなんというwwwでもいい問題なんだろうな…考えないとわからんしなー
((3)を見て)和解は条文に確定判決同じ効力があるって書いてあること以外何もわからんのだがw①は既判力で切れるぽいなー②は論点だった気もするが覚えてない…ああでも高橋説は期待可能性による既判力の修正OKだったからそれなんとか使えるんじゃないか?③は主張自体はできるんじゃないのか?かといって信義則やら争点効を書くような事情もないから、どっちかっていうと認められるかどうかをかけばいいのかな。