黒澤映画

七人の侍 [DVD]

七人の侍 [DVD]

評価:★★★
言うまでもなく黒澤監督代表作で、自分が初めて見た黒澤映画。
侍が農民に頼まれて野盗と戦うという流れは、エンターテインメントとして一級品のストーリーでありつつもたいへんわかりやすい。しかしその一方で、侍たちや農民たちのそれぞれの登場人物の来歴や思いを丁寧に描写していて、感情移入することができる(宮口精二木村功のやりとりが個人的に好き。というか宮口精二かっこよすぎる)。更に、これは色んな解釈があるところだろうが、農村や農民のカルチャーや生き様を描いていて、それが強烈なオチに繋がるという、社会描写というか、問題意識というか、そういったものもきちんと盛り込まれている。こんな映画生まれて初めて見た。日本に関心があるなら見ておいた方がいい。


生きる [DVD]

生きる [DVD]

評価:★★★
こちらも代表作。
テーマ・中身は普遍的なものなのだが、その見せ方と主人公を演ずる志村喬の名演技で最高傑作に仕上がっている。
ナレーションなどをつかって、話の大筋は解釈の余地を残さない一方、大事な場面では言葉をあまり使わず、志村の言葉以外の演技で彼の演ずる役人の心の動きを表現しているのだが、志村の演技が凄すぎるため、心の動きは恐ろしいほど伝わる上、その場面の絵がそのまま記憶に残るほどのインパクトを与える。特に、公園完成後、志村が公園を見つめるシーンの彼の演技には鳥肌が立った。また、主人公の死後、通夜にて語り合う上司同僚たちによって主人公が語られ、第三者による評価が加えられるという見せ方を示し、更には主人公の最期の生き様が、彼の周囲の社会にどのようなインパクトを与えたか、社会はそれにどう反応するかといったことまでを見せることで、社会とはどういうものかというのを考えさせる内容にもなっている。これも見て損はない。
なお、これが役人批判と解釈する向きもあるようだが、そうではなく、「社会とはどういうものか」を示すために、役人の社会がテーマとしてわかりやすかったからというだけではないだろうか。そこで描写された社会は、別に役人の世界に限られたものではないだろう。

影武者<普及版> [DVD]

影武者<普及版> [DVD]

評価:★★☆
武田信玄の影武者となった主人公が、信玄に惚れこんで懸命に信玄になりきろうとするストーリー。
時代考証七人の侍に比べてだいぶ雑。おそらく一般人が求める雰囲気を演出する為なのだろうが…しかし、熊本城や姫路城を、高天神城野田城に見立てるのはさすがに無理があるだろう…あと、長篠前の宿老が○○レンジャーみたいな感じになっててちょっとないかなと…
また、信玄に惚れこむシーンは、惚れこむ理由が分かるほどインパクトのあるものではなく、主人公が必死になる理由がピンと来なくてあとの話の説得力が低くなるというか…また、信玄に殉ずるかのようなストーリー建てはシンプルだが、長時間の映画をひっぱるにはシンプルすぎるというか…また、社会描写のようなものもたいして感じることができず、そういった面白味もなく、尺が無駄に長いような感想を持った。
とはいえ主人公を演ずる仲代達矢、信玄の弟信廉を演ずる山崎努の演技はほんとうに素晴らしく、見ごたえはある。

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