最高人民法院による集金詐欺罪に対する死刑判決の差戻しについて

反対論で異例の死刑見直し=詐欺罪の女性元富豪、審理差し戻し―中国

時事通信 4月20日(金)19時10分配信
 【北京時事】中国最高人民法院最高裁)は20日、インターネット上で反対論が噴出していた女性元富豪・呉英被告(30)に対する集金詐欺罪での死刑判決を許可せず、浙江省高級人民法院(高裁)の審理に差し戻す決定を下したと発表した。死刑が確定した被告への判決見直しは極めて異例で、ネット世論が司法の決定に待ったを掛けた形となった。
 呉被告は、高利をうたい仲介者から紹介を受けるなどした11人から7億7000万元(約100億円)の資金を集め、そのうち3億8000万元が返済不能になったとして集金詐欺罪に問われ死刑判決を受けた。高裁は今年1月、同被告の控訴を退けた。中国は二審制だが、死刑判決の場合には最高裁が最終審査する仕組みで、死刑が確定した呉被告に対する執行の是非を検討してきた。
 最高裁は「国家の金融管理秩序を著しく破壊した」と批判する一方、呉被告が多数の役人に賄賂を渡した事実を供述したことなどを考慮し、死刑執行を見合わせた。差し戻し審理で減刑される公算が大きい。
 呉英事件の背景には中国の民間金融の問題が潜む。民営経済が発達し、中小企業が乱立する浙江省では、銀行の融資を受けられず、高利貸など地下金融に依存しているのが現実。このためミニブログ「微博」(中国版ツイッター)には「民間貸借でなぜ死刑になるのか」「経済犯罪で死刑は重過ぎる」などと減刑を求める声が続出。96%が執行に反対したネット調査もあった。 
引用元:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120420-00000144-jij-int


中国では下に引用したニュースのようにとても話題になっており、日本でも若干話題になっているこのニュースについて、手元に去年大連で大人買いしてきた中国法のコンメンタールがあったので調べてみた。調べたきっかけは、財産犯で死刑あるのか!という驚き。

上の日本版ニュースの見出しでは詐欺罪となっているが、これは厳密には誤りであり、詐欺罪に対するイメージからすれば誤解を呼びうるもの。また、いつものことながら、「ネット世論が司法の決定に待ったを掛けた形となった」というのは、ネット世論に対する過大評価。

本件は、詐欺罪(刑法266条)とは区別される集金詐欺罪(刑法192条)に関する判決であり、その法的位置づけには差がある。詐欺罪が第5章「財産を侵害する罪」に組み込まれているのに対し、集金詐欺罪は、詐欺罪とは異なる第3章「社会主義市場経済秩序を破壊する罪」に組み込まれている。また、詐欺罪は日本と同様の規定だが、集金詐欺罪は、違法に財産を手に入れる目的で詐欺的手法によって違法に資本を集めることが要件とされており、詐欺罪のうち特定の手法によるものを別途規定したものである。さらに、科しうる刑は、詐欺罪が最高無期懲役、集金詐欺罪(刑法192条)は最高無期懲役だが、被害額が特に巨額で国家と人民の利益に特に重大な損害を与えた場合は死刑も選択されうる(199条)。つまり、国家と人民の利益要件が充足される場合、すなわち個人的法益のみならず社会的法益を侵害したような場合についてのみ、死刑が選択されうるということである。なお、「被害額が特に巨額」というのは条文上の表現で、その具体額は、最高裁の解釈により、個人によるものであれば100万元以上、会社によるものであれば250万元以上ということだそうだ。

また、中国は二審制だが、死刑判決が法律効果を生じる(確定する)には最高裁の承認が必要(刑訴208条)で、今回はその承認がされなかったということのよう。ちなみに、中国の死刑は場合によっては2年の執行留保期間が付され、その期間に受刑者が故意による犯罪を犯さなければ減軽されるというユニークな制度がある。

ざっと読んだ限り、本件が差し戻されたのは、どうやら事実認定も手続も問題ないけど、量刑辛すぎじゃない、ということのよう。専門家によると、要するに情状の問題であるが、この判決からは、死刑について最高裁が慎重な運営を目指そうとしているという意図が見えるとか。財産犯で死刑を科すことについての議論に影響を与えそうだとか、注目していた人民の意図を汲み取ったものだとか、現状の市場取引規制は10年遅れているといったコメントも。

ついでに、弁護士のコメントが「この結論は最高裁の更なる進歩的な司法理念と更なる専門性を体現したものである」というのが中国らしくてちょっとおもしろかったw

最高法未核准吴英死刑 律师称重审仍做无罪辩护
http://www.rednet.cn 2012/4/21 8:46:47
  对于社会广泛关注的吴英案,最高人民法院现已复核完毕。昨天,最高法依法裁定不核准吴英死刑,将案件发回浙江省高级人民法院重新审判。

  一审二审定性准确集资诈骗事实清楚

  最高法称,经复核认为,吴英集资诈骗犯罪事实清楚,证据确实、充分,一审判决、二审裁定定性准确,审判程序合法。

  最高法称,吴英主观上具有非法占有的目的。吴英在早期高息集资已形成巨额外债的情况下,明知必然无法归还,却使用欺骗手段继续以高息(多为每万元每天40-50元,最高年利率超过180%)不断地从林卫平等人处非法集资。吴英将集资款部分用于偿付欠款和利息,部分用于购买房产、车辆和个人挥霍,还对部分集资款进行随意处置和捐赠。吴英个人购买服装、吃喝等花费集资款逾1000万元,拥有4辆宝马车,还花费375万元为自己购买法拉利跑车1辆。吴英取得集资款项后,为了荽富,以骗取更多的资金而出手大方,在向杨卫陵等人借款3300万元炒期货全部亏损后,却谎称赢利,竟另筹资分给杨等“红利”1600万元,后又陆续从杨处骗得资金5000多万元;公司员工外出办事结余90万元,主动要其不必上交财务,等等,最终导致3.8亿元集资款无法归还。

  集资诈骗罪要件成立直接被害人仅2人相识

  此前,有关吴英案是否构成集资诈骗罪在社会上存在争议。吴英的辩护律师和一些学者认为,集资诈骗罪的要件之一即该罪的对象是不特定公众,吴英案中的11名债权人是吴英的朋友,并非不特定公众。对此,最高法亦有相应的回应。

  最高法称,吴英在集资过程中使用了诈骗手段。为了集资,吴英隐瞒其资金均来源于高息集资并负有巨额债务的真相,并通过短时间内注册成立多家公司和签订大量购房合同等进行虚假宣传,为其塑造“亿万富姐”的虚假形象。集资时,其还向被害人编造欲投资收购商铺、烂尾楼和做媒、石油等“高回报项目”,骗取信任。吴英非法集资对象为不特定公众。吴英委托杨某等人为其在社会上寻找“做资金生意”的人,事先并无特定对象,事实上,其非法集资的对象除林卫平等11名直接被害人,还包括向林卫平等人提供资金的100多名“下线”,也包括俞亚素等数十名直接向吴英提供资金因先后归还或以房产等抵押未按诈骗对象认定的人。在集资诈骗的11名直接被害人中,除了蒋辛幸、周忠红2人在被骗之前认识吴英外,其余都是经中间人介绍而为其集资,并非所谓的“亲友”。林卫平等人向更大范围的公众筹集资金,吴英对此完全清楚。

  可判死刑不立即执行发回浙江省高院重审

  最高法认为,吴英集资诈骗数额特别巨大,给受害人造成重大损失,同时严重破坏了国家金融管理秩序,危害特别严重,应依法惩处。吴英归案后,如实供述所犯罪行,并供述了其贿赂多名公务人员的事实,综合全案考虑,对吴英判处死刑,可不立即执行。

  因此,根据相关规定,最高法裁定不核准吴英死刑,发回浙江省高级人民法院重新审判。

  吴英律师

  重审时仍做无罪辩护

  吴英的辩护律师杨照东觉得这是意料之中的结果。他表示,这一结果体现了最高人民法院更先进的司法理念和更高的专业素质,最终的结果仍需拭目以待,“我始终坚持,吴英不构成集资诈骗,也不构成非法吸收公众存款罪,重审时我仍将为她做无罪辩护”。

  杨照东说,吴英被判死缓的可能性很大,但无论如何审判,法院都应该有相应的解释。他说,应该感谢支持吴英、为吴英求情的广大网民。

  专家释案

  北师大法学院院长、中国刑法学研究会会长赵秉志表示,他非常赞成和支持最高法关于吴英案发回重审的裁定。

  裁定具有说服力

  赵秉志称,最高法明确表示,认为吴英构成集资诈骗,肯定一审和二审定性准确。最高法阐明了吴英构成集资诈骗的理由,认为吴英具有非法占有的目的,采取了欺骗手段,对象多为不特定的人,且数额特别巨大,3.8亿元集资款无法归还,不但给被害人造成损失,还严重破坏了国家金融管理秩序。最高法的裁定具有说服力。

  同时,最高法指出不核准吴英死刑基于两个理由,即如实供述所犯罪行和交代行贿公务员的事实,这属于从宽情节。

  为改判留下余地

  最高法对吴英案的裁定传达出两层信息。首先,最高法按照严格控制死刑的司法政策,明确表态不能再对吴英判处死刑立即执行。第二层意思是不判死刑立即执行的情况下,是判死缓、无期还是有期徒刑,允许浙江高院综合全案考虑,这给浙江高院依法权衡最高法所阐明的两种从宽情节及其他可能存在的从宽情节留下了余地,并给浙江高院一个纠正原判决树立司法公正和权威的机会。

  赵秉志表示,相信并希望浙江高院能认真体会最高法发回重审的裁定,积极贯彻国家严格控制死刑的刑事政策,对吴英案作出一个经得起法治和实践检验的判决。他还认为集资诈骗目前设置死刑是不合理的,他个人认为浙江高院如果能对吴英案不判处死缓,其积极意义更加显著。

  为相关改革起引导作用

  赵秉志认为,最高法的裁定具有积极的意义。

  一是体现了死刑核准阶段严格控制死刑、尽量减少死刑适用的刑事政策,并同时考虑到理论界和实务界对集资诈骗保留死刑多有批评的情况。

  二是考虑到集资诈骗的对象应该说也有一定的过错,这与其他案件受害人没有过错的犯罪不同。还适当考虑到我国目前在民间借贷和金融活动的规范上存在一些问题,因此尽量不使用最严厉的刑罚解决问题。

  另外,最高法适当听取了舆情民意,合理吸收有益的观点,在法律范围内能够考虑的加以考虑。因此,该案意义重大。这样一个典型案件,受到全国的高度关注,最高法采取审慎的态度,将为今后同类的案件和相关司法、立法的改革起到积极的引导作用。

  中国政法大学教授李曙光表示,对民间借贷出现的违法现象,金融管制部门也应该分担一定的责任,不能把所有责任全都归结为市场行为。

  与加快金融改革的信号有关

  李曙光称,吴英案具有标志性意义。该案反映出市场经济中的深层次问题,特别是市场交易的规则、民间金融的困境、整个金融业的相对僵化等。

  李曙光教授称,要看到吴英案背后的原因即原来民间金融不开放和金融管制过死。某种程度上说,对民间借贷出现的违法现象,金融管制部门也应该分担一定的责任,不能把所有责任全都归结为市场行为。当然这和最近一系列加快金融改革的信号及市场经济对金融改革的呼唤有关,比如设立温州金融综合改革试验区等。他说,这和宏观经济也有关系。宏观经济在一季度还是比较紧的,虽有多方面原因,但金融过死是一个重要原因,金融管制和金融发展不相适应。如何更好地为市场经济中的主体,特别是中小企业、小微企业注入流动性,让其有创新和发展的动力,金融扮演不可替代的角色,特别是民间金融。因此,民间金融的改革要加快。

  李曙光教授提到,吴英案还反映出法律体系在现代金融创新、金融改革等方面的滞后,民商法、金融法要加快改革,特别是刑法对金融和市场变化跟不上,关于集资和借贷、放贷等控制和观念还停留在十年前。

  吴英案回放

  2003年吴英成立新贵族美体沙龙掘到第一桶金

  2005年底吴英注册“本色”系列商标,投资5000万元装修本色概念酒店

  2006年吴英相继在浙江、湖北成立两家信义投资担保公司开始介入民间借贷、铜期货等交易

  2007年2月吴英被东阳公安局以非法吸收公众存款罪刑拘

  2007年3月吴英因涉嫌非法吸收公众存款罪被捕

  2009年12月18日金华市中级人民法院依法作出一审判决,以集资诈骗罪判处吴英死刑,并处没收其个人全部财产

  2010年1月吴英不服一审判决,提起上诉

  2012年1月18日浙江省高级人民法院对吴英集资诈骗一案二审判决,裁定驳回吴英的上诉,维持对吴英的死刑判决

  2月7日浙江省高院吴英案二审审判长就吴英案具体案情五大焦点作出书面回应

  2月14日最高法首次回应此案,称将依法审慎处理

  4月20日最高法裁定不核准吴英死刑,将案件发回浙江省高级人民法院重新审判


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