修習にて思うこと(3)―修習と先立つもの

今日は、修習生とお金の話を書こうと思います。
なお、修習に入る前、つまり法科大学院と修習に入るまでの期間についてのお金の話は以前書いた記事がありますので、そちらをご参照ください*1
一応、その記事から出費の話だけ抜き出しておくと以下のようになります。

地方出身者が東京の法科大学院に二年通うと…
学費:170万円(国立)・300万から400万円(私立)
生活費:月15万+α(教材費等雑費)。二年で400万円
卒業後修習までの八ヶ月間の生活費+引っ越し代:150万円
合計:720万円(国立)・850万から950万円(私立)
となります。

バイトで月8万稼いでも、2年で200万は稼げないので、全部自分で支払おうとすると、国立だと550万円ほど、私立だと700から800万円ほど借金することになろうかと思います。更に、場合によると、これに学部時代の奨学金も積まれることになります。

同様に、修習生についても考えます。

本年から貸与制ですので、収入ではないですけども、修習生の手取りは月23万円または25万5千円、或いは28万円。これは、住居手当または扶養家族手当がつくと25万5千円、住居手当及び扶養家族手当がつくと28万円になるということです。この金額を1年間借ります。なお、詳細については最高裁のHP*2をご参照ください。

おそらく大半の人は23万円か25万5千円を借りているのではないかと思います。
たとえば、私のように実家以外で修習をしていると、自分で家を借りることになるので、25万5千円となります。

一方出費ですが、これは個人差があるので何とも言いにくいところはあります。
しかし、それぞれの修習生の出費で差が出るとしたら、以下の要素が大きいでしょう。

1 修習の際に家を借りているかどうか(実家から修習に行っているかどうか)
実家で修習をしている場合、家賃や食費の一部が浮くので、かなり余裕のある生活ができることになろうかと思います。

2 司法試験受験生時代から転居をしているかどうか
たとえば、東京の大学や大学院に通った後司法試験を受け、修習も東京やその周辺県にて行う場合、転居をしないので、引越費用がかからないことになります。

3 就職地が修習地と同一かどうか
たとえば、修習地で就職すれば、修習時代に住んでいる家をそのまま維持できるので、引越費用はかからないことになります。

4 就職が決まる時期が早いかどうか
就職が決まる時期が遅いと、その分交通費がかかります。特に、修習地が大都市から遠いほどこの問題は大きくなり、たとえば関西から東京に就職活動に行くとなれば、どんなにケチっても1万円はかかりますし、新幹線で往復し1泊すると、安くあげても3万円はかかります。

5 集合修習で寮に入れるかどうか
埼玉県和光市での集合修習をするにあたっては、当然ですが和光近辺に住まなければなりません。寮もありますが、全員が入れるわけではありませんので、場合によっては寮に入れないこともあり、そうすると自分で住宅を手配しなければなりません。東京やその周辺県で修習しているのであれば問題は大きくありませんが、そうでなければ自分で改めて手配することになり、引越費用等もかなりかかることになるでしょう。

6 修習の班がA班かB班のいずれにあたるか
A班は和光での集合修習→修習地での選択修習という流れになっているので、選択修習に備えて修習地の家を維持しておく必要があります。一方のB班は修習地での選択修習→和光での集合修習という順序なので、修習地の家を明け渡し、和光の寮に入って、集合修習が終われば就職予定地に引っ越してしまうということができますから、引越費用を1回分少なくすることができます。

要するに、一番お金がかからないのが、実家で大学、大学院、司法試験受験時代を過ごし、さらに、修習も就職も実家所在地でというパターンです。
逆に、一番お金がかかるのが、実家を離れて一人暮らし状態で大学、大学院、司法試験受験時代を過ごし、修習は大学院所在地でも実家でもないところで行い、さらに就職は修習地以外でというパターンです(私はこのパターン…)。

大きな要素としては上のようになろうかというところです。
ずいぶん細かく書くなあと思われたかもしれませんが、それくらい、お金は意外にもカツカツということです。

私の場合、今一番頭を悩ませているのが、修習後、就職地の東京に戻る際の資金をどう工面するかという問題です。そこで、先日修習64期の友人に修習地から就職先への引越費用をどう工面したか聞いたら、修習生のボーナスでと言われ絶句しました。そういえば、昨年まではボーナスがあったんだった、と。

そう考えると、ボーナス分が貸与されない以上、現状の制度で引越費用を自分で出すのはちょっと厳しいところがあります。もちろん貯めるのが無理とは言いません。実際、とっても切り詰めれば、私の場合でも月5、6万円は貯められると思います。しかし、その場合、充実した修習をするのは厳しいでしょう。もちろん、「充実」の理解の問題もありますが、本代や、交際費(特に、法曹外の人達との意見交換や勉強会にかかるようなもの)までケチるような生活をしていてまともな法曹になれる自信はあまりありません。今年からの貸与制、新制度故か、ボーナス分の貸与等の考慮がされていないようにも思います。修習地を自由には選べない以上、引越一時金の貸与を取り入れてほしいというのは強く願うところです。それか、専念義務を一部解除して、バイト代を稼げるようにするか。

ちなみに、このブログでは散々書いて来ていますが、私は給費制復活をとなえるものではありません。もちろん、貰えればありがたいし、専念義務があってバイトもできないのに無給というのは不思議な気もします。しかし、就職して収入があれば(少なくとも修習での)貸与額は頑張れば返せる程度なので、給費制よりも、修習生の就職先が少ないことの方がよほど問題だと思っているというところです。あとは、偉大なる先達を養うことばかりに意識が向いているこの国が、私に何かをしてくれることにはあまり期待していません。悪い意味で“Ask not what your country can do for you. Ask what you can do for your country”ということですね。このブログだって言いっぱなしというスタンスでやっています。

とまあ、最後やけっぱちな文章になってしまいましたが、とりあえず、これから修習に入る方は、上の要素も考慮して修習地を選択していただければいいのではないかと思います。

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