修習にて思うこと(4)―いち修習生の家計簿公開

二回試験直前*1ですが、一日中勉強するのも無理なので、気分転換をかねて投稿を。

さて、貸与制一期目である我々の修習が終わる時期だからか、諸先輩方が修習生の待遇について議論してくださっているのを結構目にします。我々について気にかけてくださっていて大変ありがたいと思う一方、たとえば修習生に対するヒアリングなどではおそらく修習生の不平不満しか出ず、実態というのは必ずしも伝わっていないのではないかという印象があります。そこで、いち修習生である私の家計簿を公開します。なんだこの羞恥プレイ。まあ、修習生の貸与額は公開されているので別にいいんですけども。なお、家計簿を実際に付けていたわけではないので、あくまでも概算です。

<収入*2
最高裁の貸与金:25万5000円×13=331万5000円
・親からの借金:10万円
合計:341万5000円

<支出>
・家賃:6万2000円×13=80万6000円
・遠方への交通費:67万円
 内訳…上京×10、帰省×4、宮崎鹿児島旅行*3×1、福島×1、秋田*4×1、熊野×1、日帰り城巡り×10、18切符×1
・普段の交通費:月1万円*5×13=13万円
・書籍代*6:月2万円×13=26万円
・交際費*7:月4万円×13=52万円
・靴、衣服費*8:13万円
・家具、電化製品*9:3万円
・食費、喫茶代*10:月5万円×13=65万円
弁護士会登録費用:12万円

11月19日追記*11:私は奨学金の返済を来年2月まで猶予してもらっています。ただ、猶予が今年の5月くらいからだったので、昨年10月から月2万円余り合計15万円くらい返還しています(が上にカウントするのを失念していました)。また、この記事には書いていませんでしたが、私は学部とローで奨学金*12を550万円くらい借りていますし、学部在学中どころかロー在学中、司法試験直前の二月まで家庭教師で生活費を稼いでいました。以上からすれば、今年二回試験に合格したとして、修習中の貸与金と合わせると私は働き始めるまでに借金900万円近くを負ったことになります。なお、学部・ロー・修習中の出費の話については以前書いた記事*13をご覧ください。


合計:331万6000円

超概算ですが、だいたいこんなものです。差額は年末の引っ越し費用等へ充てますが、全然足りないので、それらはどうにかして工面することになるかと思います。

さて、上記を見ていただければ明らかですが、私の場合、この一年私服を一枚も買わずに衣服代をケチってるくらいで、たいして節約をしているということはありません。また、旅行費用で67万円、交際費で52万円、食費等で60万円と、この辺りは削ろうと思えばかなり削れるでしょう。私は、法曹界、それ以外の業界の方々問わず、いろんな人と交流することには金をケチらないというようにしようと考えていたので、何度も上京したり、交際費がえらい高くついていますが、これは支出せずとも暮らしてはいけるでしょう。食費も、自炊を増やせばもっと抑えられるでしょう。また、書籍代も、ケチろうと思えばいくらでもケチれます。

そう考えると、修習生の生活はかなり余裕があるのではないかとも思えます。まあ、上に述べたような「余分な」出費をケチった場合に、充実した修習になるかどうかはわかりませんが…

なお、なんでまたこんな話を書き始めたかといいますと、「修習生は貸与制になったから修習先での懇親会に参加するのもしんどい」という話が出ていたということを某所で見かけたからです。これについては、私としては懇親会のコストパフォーマンス*14を考えれば、参加しないという選択肢はありえないと個人的には思っているんですけれども、それはともかく、上の家計簿からすれば、月1回の懇親会費用を捻出できないほど修習生がカツカツの生活をしているとは思えません*15

ただ、そう言いたくなってしまう修習生がいることも気持ちとしてはわかります。私は以前から貸与制自体にはあまり反対していないのでそうでもないですが、人によっては、勤務時間内で拘束されているのに給料ももらえず、しかも将来の展望も開けてないとかやってられないわ!という思いから、そういうことを言いたくなるというのはよくわかります。

つまり、私含めておそらく修習生の最大の悩みは、将来が以前に比べて見えにくいということだと思います。この結論が、二年前の記事に書いたのと全く同じというのが非常に残念なのですが*16…今の時点で私自身は、将来が見えようが見えまいが、この道を選んだ以上は努力して食っていくしかないと割り切り、或いは食っていけると信じています。しかし、多くの修習生の現状認識は、今後は食っていけるかどうかも分からないし、少なくとも法曹が昔みたいにいい生活ができる保証は全くないから困ったもんだ、という感じでしょう。そういった状態における修習生の悩みの象徴がある意味貸与制なのかなあという印象はあります。
上のような修習生の発言は、そういった思いの顕れだとすれば理解はできるということです。

また、これはそのうちまた書こうと思っているのですが、最近少し考えが変わってきまして、以前と違って法曹人口増員自体は悪くないのではないかと考えています。ただ、法曹になるまでの時間的・経済的負担が大きすぎるのが問題かなあと。そして、法曹界にとって一番危惧すべきは、貸与制云々よりも、法曹の魅力自体がなくなってきていることだということです。これも上に引用した二年前の記事に書いたことですが、300万円余りの借金が上乗せされても、本当に法曹界に魅力があれば、それだけで断念する人はいないでしょう。こういった話は本日の投稿とは関係ないのでそのうち。

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*1:来週の月曜日から再来週の月曜日まで、5日間です。司法試験と違ってほぼ全員合格する試験ゆえの変な緊張感があります。

*2:厳密には借入ですが…

*3:修習生同期での旅行

*4:義理事

*5:特に和光滞在中の交通費は高くつきます。都内に行くだけで往復1000円程度。

*6:コピー代等も含める

*7:懇親会や義理事、勉強会等の出費

*8:スーツ、シャツ、靴

*9:修習開始後購入したもの

*10:私は喫茶店で勉強・読書をするため

*11:ツイッター奨学金を返済していないんじゃないかとの指摘を受けての追記です。

*12:無利子のみでは足りず、有利子のものも借りていました。

*13:http://d.hatena.ne.jp/he_knows_my_name/20120624

*14:コスト:参加費用3〜4千円、パフォーマンス:そこで聴くことができる話や、先輩法曹との懇親の機会獲得

*15:もちろん、それまでに借金を負っていて、返済を猶予してもらえないといった事情や、家庭を持っていて家計における収入がないといった事情があれば別ですが

*16:http://d.hatena.ne.jp/he_knows_my_name/20101007