弁護士の就職活動について

長いので目次を。
1 弁護士の就職活動のスケジュール
2 自分の就職活動事情
(1)内定先について
(2)就職活動の大まかな方針について
(3)時期ごとの流れ
 a.5月下旬
 b.6月
 c.7月
(4)就職活動を経ての感想
 a.65期の採用についての感想と採用人数について
 b.大手事務所へ行きたいという人へ
 c.「勝ち組」就活ができなかった人へ
 d.ESや面接に臨む前にやるべきこと−相手がどんな人を求めているかを知る
 e.相手が求めている人材像を知るには
 f.相手の求めている人材像に合う自分像の提示について
 g.ESや面接でのPRについて
 h.準備は万全に
3 まとめ


1 弁護士の就職活動のスケジュール
法科大学院卒業後、就職するには他と同様就職活動というものがあるのは当然ですが、それについて今回は長々と書きます。

まず、就職活動のスケジュールですが、5月に司法試験が終わると、5月下旬くらいから国内大手〜中堅(弁護士数30人以上くらいのイメージ)の事務所や外資系事務所が説明会をはじめとする採用活動を開始します。もちろん、これ以外の圧倒的多数の事務所は、合格発表のある9月以降、あるいは司法修習開始後に採用をするわけですが、特にいわゆる上位ローといわれる法科大学院卒業生は、6月から就活を開始します。また、任官といわれる裁判官、検察官志望者は、司法修習開始後のスカウトを待ちますが、「滑り止め」として就活をする者もいます。


2 自分の就職活動事情
さて、以下来年以降就活をする方々(もちろん自分がそのうちの一人である可能性は否定できない)の参考にでもなればということで、自分の就活の結果と概要を記した上で、偉そうに就活の感想を記します。自分もとある一個上のローの方々のブログ等を大いに参考にさせていただいていたのでこういうことをしようと思い立ちました。

(1)内定先について
まず自分の結果について。
自分は最初っから任官を考えていなかったので、弁護士一本やりで、7月いっぱいまで就活を続けていたんですが、おかげさまで先日第一志望の事務所に内定を頂き、受諾する旨のメールをお送りしました。

正直、最初この事務所には全然興味がなかったんですが、某後輩に「中国が強いらしい」という情報をもらったことから、たいして考えもせずに説明会に参加したら、なんか先生方が今まで見てきた事務所とはちょっと違った雰囲気なのでおよよと思っていたところ、アソの先生とのお食事会で、なんかもう一度会いたい方ばっかだなあと思い始めて気付いたら第一志望になっていたというところです。しかも、元々第一志望だった事務所を書類切りされた日に行った説明会がこちらで、ただの偶然でしょうがなんか不思議な感じがします。ほんと世の中ひょんなことからって感じですね。とりあえず、内定いただいた昨日がたまたま母親の誕生日だったので、若干の親孝行にもなって何よりでした。

もちろん、九月の発表次第で内定取消がありえるんですけど、今までにないくらい合格を望んでいる自分がいて少々驚いています。ロー在学中は弁護士になるべきか凄く悩んでいて、おかげさまで夏のインターンも行かず、成績もほんとに(笑)な感じ*1でしたが、この事務所については、ここで仕事したいなと自然に思えて、気付いたらガチになっていた自分がいました。そこそこ多くの事務所の説明会に行きましたが、雰囲気的にここがいいなあというのは僕のストライクゾーンが狭いからかそう多くなかったですし、ES出した事務所の8割が書類切りだったり、書類提出後や面接後のサイレントお祈りされまくったりもしましたので、唯一のカードとなっていたこの事務所に対する思い入れが強いということもあるのではないかという疑心はありますが、とりあえず今は自分の選択は間違っていないと確信しています。 嬉しくて涙が出たのは学部の合格発表以来ですので。


(2)就職活動の大まかな方針について
次に、方針については以下のとおり。感想等は言うまでもなく僕個人が感じたにすぎないことで、事実とは異なる場合があり得ることは当然です。

・興味関心あり:中国法務、MA、事業再生、商事売買、海商、一般民事、労働
・環境的な意味での好き嫌いが激しいのはわかっているので、訪問する事務所は絞る
・でも興味関心がある分野に強い事務所は、説明会やっていなくても訪問する
・事務所説明会は色んな意味で有益なので興味の強弱問わず極力参加する。説明会では食わず嫌いはしない
・震災もあって今年の採用は大変厳しいと思われるので、期待はしない
・藤本大学さん*2のHPにて、日本の弁護士数上位50の事務所を調べ、それらの事務所のHPを全てブックマークして適宜チェック。エクセルで説明会や個別面接の日程、自分のスケジュール等を一括管理


(3)時期ごとの流れ
a.5月下旬
・まずはアットリーガル*3という、リクナビの法律家版みたいなところに登録。だいたい一日か二日に一回くらいメールが届き、弁護士事務所の説明会開始等をお知らせしてくれるが、どうもここだけでは足りないようなので、上記のようにHPをチェックするようにした

・某大手事務所説明会。家族的な雰囲気で、先生方は情熱的だが冷静な思考をされる印象の方ばかりで、ここで働きたいと強く思った。とはいえ、最初の事務所訪問なので、相対評価ができないということで落ち着こうという話。他の事務所も見てみるのは当然ではあるが、とりあえず択一の結果が出てパスしてたら訪問申し込もうと思った。とはいえ、この時は択一落ちを確信していたので、来年に向けてのモチベアップのための訪問くらいの意識しかなかった


b.6月
・択一まさかの合格。訪問については周りに対する出遅れ感半端ない

・なのに週末房総に遊びに行く始末。でも鴨シーのイルカとシャチがかわいすぎて萌え死ねたのでそれはそれでいい。しかし内房線車内でESを練ることになろうとは…訪問申込先のHPをプリントアウトして持参し、旅館ではPC使ってESを打つという不思議な旅行に…

・某大手外資系事務所説明会。パートナーの著名な先生方が沢山参加されてて、力の入り具合に軽く感動した。しかも、各分野に強いパートナーの先生が参加され、もう説明会と言うより、今後法曹になる我々へのレクチャーみたいになっていてありがたい限り。事業再生のお話は特におもしろく、先生も大変魅力的な方で、この先生の下で働きたいと思った。終了後、事務所内見学あり。ちょっと狭い印象を受けた。

・某外資系事務所説明会。説明会後、事務所内案内、多くの先生が参加される懇親会あり。とりあえず説明会で先生がお話になっている際に、学生が並んでいる列の後ろで秘書さんが残り○分と書かれた紙を掲げて先生に見せていたのに驚いた、というか正直若干引いた。結構長い時間お話させていただいたトップの先生は魅力的だったが、懇親会でお話しした先生方から、いい事務所だという雰囲気を感じられなかった。

・某大手事務所説明会。説明会は二時間くらいを5人の先生で回すとかなり力が入っていたが、体育会系でありつつも綺麗目な事務所で自分には合わないんじゃないかと思ったり。説明会後、事務所内案内あり。綺麗な事務所だが、空きスペースが多く、なんか無駄だなあと思った。

・某事務所説明会。説明会はかなり人気だったようで、あっという間に埋まっていた模様。先生方は確か全部で8人いらっしゃっていて、質疑応答タイムがかなり充実していた。国内に強い事務所なので、今後日本国内のパイが縮小するのに対応して経営方針をどうしていくおつもりかと質問したところ、はぐらかされた。これで個人的には印象が悪くなったが、一緒に行った友達はかなりいい印象を受けたらしいので、好みが分かれるのかもしれない。また、先生方は確かに魅力的な印象はあった。

・某大手事務所説明会。説明会と聞いて行ったところ、最初事務所の説明を簡単にされた後は、先生6対学生10というグループ面接だった。自己紹介をした後、アドリブ質問をされ、出来た人から答えさせるという大喜利形式。面接終了後、事務所内の見学あり。ここは他の事務所とはえらく雰囲気が違って、妙な勢いみたいなものを感じた。

・その他、大手1カ所外資系2か所に説明会参加を申し込んだが書類切り(または定員に達していたため断られた)。大手2か所に個別を申し込んだがレスなし。

・元々の第一志望は6月末に書類切り。あきらめず他の事務所にインターンを申し込んだがサイレントお祈り。上の事務所の内2か所は個別出したら翌月次のステップへ。それ以外は個別出さず。この点は後で後悔。


c.7月
・この時期、というか6月いっぱいで国内の大手は内定出尽くしているようで、東大ローだと、誰誰がどこどこに決まった、みたいな話が恐ろしいペースで出回る。上旬に機会があって集まった東大ロー4人のうち自分を除く3人が四大に内定をもらっていた。一方自分は、書類選考より先に進んだのが2カ所、インターンの面接が1カ所のみ。焦りはなかったが、事業再生の先生が魅力的な某事務所の個別を出さなかったことは後悔。

・某外資系事務所のインターン面接。あまりうまくやれなかった。結果、面接落ち。

・某事務所アソシエイトの先生とのお食事会。2時間ほど。それなりに喋れたような気がする。何とかパスして次のステップへ。

・某事務所書類選考後最初の面接。かなりうまくやったつもりだったが、どうもあちらの好みと合わなかったようで、その後サイレントお祈り。

・某事務所パートナーの先生とのお食事会。2時間ほど。お食事会の前に面接あり。正直あんまりうまく行ったとは思わなかったが、次のステップへ。

・某事務所パートナーの先生との面接、お食事会。3時間ほど。8月になって、内定のメールをいただく。何より、悪い印象を一度も持たなかった一方、先生方が魅力的な方ばかりで、喜んで受諾する。



(4)就職活動を経ての感想
a.65期の採用についての感想と採用人数について
今年は今まで以上に厳しいらしいです。
大手が採用を減らしたという噂も聞いています。また、東大ローで成績優秀な、いわゆる「第一ブロック」の人たちでも決まっていないという話もあります。

とはいえ、前提として、弁護士の採用というのはこの時期に限られたものではないどころか、合格発表後にされるもののほうが多いようですので、今の時期厳しいといってもねえという話ではあります。
というのは、今の時期に採用をする事務所というのは、たいてい大きな事務所です。
意外に知られていないようですが、国内の弁護士事務所を弁護士数順で並べて上位50に入る事務所で最も人数が少ないのは25人です。また、100人を超える事務所は七つ(以下このあたりを「大手」と言います)しかありません*4し、50人を超える事務所でも十五くらいです。ですので、今採用されなかったからと言っても、その後の採用に乗れば弁護士にはなれるので、どーのこーの言う必要は全くないと思います。もちろん、企業法務の大きな事案がやりたいみたいな人だったら、なるべく大きいとこに行きたいと思うのはわかりますが。

そして、上位50の事務所に限ってみても、採用をやっているところは20くらい。そんで、新規採用数が当該事務所所属弁護士数の10%*5と見積もっても、上位50の弁護士の合計人数(3500くらい)×20/50×10/100=140なので、そこに入れる人の方が少ないのは当たり前です。


b.大手事務所へ行きたいという人へ
さて、そういった分析をした上で、就活の印象についてなんですが、いわゆる上位ローといわれるローの人たちで、今採用やっているような事務所に行きたいという方々に言うとしたら、「ロー二年生でいい成績とって三年夏のインターンに複数行った上で、なるべく成績を卒業までキープしろ」に尽きます。

というのも、推測するに、事務所からすれば、たとえば長い社会人経験を持っているとか、帰国子女で英語ペラペラとかそういった事情のない限り、学部からロー直行組なんて全員大差はなくて、成績以外で差別化することなんて無理だということです。また、インターンで見ていて、ふつうに仕事ができてコミュニケーションが取れ、その上で成績もぼちぼち*6であれば、その人を採用してしまえばよく、あえてインターンで見ていない他の人を採用するようなリスクを冒す必要はないということになります。

ということで、特にインターンを採用の一環と割り切っている事務所*7では、結果的にこの時期採用したのはほとんどがインターンに来ていた人、ということもあります。また、インターン参加者については6月頭に事務所から電話がかかってきて個別訪問に来ないかと誘われるということがよくあるようで、よほどのことがない限りかなりの確率で採用されるようです。そんなわけで、インターンに行く人というのは成績要件等ゆえに大抵被っているということもあって、一般の就職活動同様、内定をいくつももらう人というのが発生します。


c.「勝ち組」就活ができなかった人へ
さて、そういった成績優秀で三年夏インターン→六月中内定といった「勝ち組」*8路線に乗れないとどうなるか、という話です。たとえば自分のようにロースクールの成績が残念で、しかもインターンなんてあまり関心持ってなかったっていう人たちについてですが、これはもう一般の就職活動と同じように、事務所のHPを三日に一回くらいチェックしたり、アットリーガルに登録したりして、見つけた説明会や個別訪問に行って、大変数の少ない椅子取りゲーム*9に参加するということになります。なお、こういった場合大体の流れは、説明会参加→個別訪問を数回→内定といった感じです。ただし、説明会には参加しなくても個別訪問には参加できることがほとんどです。また、個別訪問の中身とかやり方というのは、単に話すだけなのか食事会形式か、或いは圧迫面接かは事務所ごとに千差万別ですが、進むほど上の期の先生とということになるのは一般の企業と同様です。更に、説明会と銘打っていたのに、行ってみたらグループ面接だったりすることもあります。

そして、このような就活について、一番いい戦略はおそらく、「凡そ応募できるものには全て出す。しかも応募が始まって早いうちに出す」ということになろうかと思われます。自分の場合は、説明会は社会勉強も兼ねて参加できるものにはなるべく参加する一方、中国法務に拘っていたこともあって、およそ興味がもてない事務所については説明会に参加した後も個別訪問を出さないということは多くありました。しかし、さくっと書類切りやサイレントお祈りを連発された*10りした六月下旬くらいには、もっと出しておけばよかったという後悔に苛まれまくってたので、多く出した方がいいかもしれません。


d.ESや面接に臨む前にやるべきこと−相手がどんな人を求めているかを知る
ESで何を書くかや、面接で何を話すべきかは、正直事務所によって見ているところや、やり方(面接に参加する弁護士の数や就活生の数)が違うので一般的なことは凄く言いにくいです。しかし、あえて言うとしたら、次のようになろうかと思います。

まず、基本の基本は、就活は恋愛と一緒で、「相手に好きになってもらえるか」が全てです。
つまり、相手が求めているものは何かを探り、それに対して自分が応えられるということをアピールする作業です。もちろん、恋愛同様、相手が何を求めているのかはあまり見えないので、自分の「売り」をアピールしていくことにはなります。しかし、相手が求めているものを探る作業も怠ってはなりません。それを怠るのは、恋愛で言うと、相手に対して「俺/私はいい男/女だ!俺/私のこと好きになれよ!」という主張を繰り返すということになります。現実世界でそんな人にパートナーができるでしょうか?
すなわち、内定/恋愛で言うとパートナーを手に入れるためには、まず相手がどんな人を求めているかを知ることが重要なのです。

つまるところ、相手は「こいつと一緒に仕事できるかどうか」、恋愛で言うと「私はこの人と付き合うと幸せになれるか」を見ているわけで、相手が求めるものは、ルックスか、財力か、性格かといった具合で違いがあるわけですから、相手の求める人がどんな者なのかを察知し、自分のアピールはそのニーズに合わせていく必要があります。


e.相手が求めている人材像を知るには
相手がどんな人を求めているかというのを探るために具体的にやるべきことは、当該事務所の説明会に参加したり、インターンに行ったり、OBOGのつて等を辿ったりして当該事務所の雰囲気を察知することだったり、当該事務所の自分と期が近いアソシエイトを見てどのような人が採用されているかを見たり、もっと大きく弁護士の仕事、或いはある分野はどういうものなのかというのを普段から知ろうとすることだったりするでしょうが、これらは就活時期に入ってすれば間に合うものだけではないということは間違いないと思います。ですから、ロースクール在学中から機会を見つけて弁護士の先生方と交流するようにしましょう。

特に重要なのが、その事務所の雰囲気を知ることです。大手だと説明会を開催することが多いので、それに参加して実際そこで務めていらっしゃる先生方や、その後の事務所見学で事務所の雰囲気を観察するのがいいでしょう。個人的には、大手は色んな人がいるとはいえ、ある程度事務所の雰囲気に共通性があるように思っています。一方で、それ以外の50人前後の事務所は、先生のキャラクターに一定の共通性があるように見受けられます。ですから、そういったところを少しでも見逃さないようにしましょう。


f.相手の求めている人材像に合う自分像の提示について
相手が求めている人材像をつかんだ上で、ESや面接では、なるべくそれに合わせたESやトークを展開しましょう。逆に言うと、雰囲気があまりにも自分と合わないような事務所は、入った後幸せになれるとは思えないので行かない方がいいでしょうね。どの程度まで合わせるかは自分次第ですが、相手、特にパートナーレベルの方は人間観察にすぐれていますので、嘘をつきすぎるのも無理があります。だからといって、「自分らしさ全開で理解してもらえる所に行ければそれでいい(キリッ」戦略は相当リスクがあるというのと、相手が求めていないことを必死こいてアピールするのはマイナスされる可能性すらありうる*11と思うので、いずれにせよ相手のニーズに自分のアピールすることを合わせることは必要だと思います。


g.ESや面接でのPRについて
次に、ESや面接で述べるPRポイントについてですが、これについても事務所によって好みが異なりますので、ある程度自分の売りをまとめ、相手の突っ込みを待つしかないと思います。たとえば、僕の場合、会心の出来と思った面接で落とされた一方、やらかしたと思ったのに次に進めたり、或いは、自分ではおよそPRポイントにならないと思っていた刑訴のペーパーについて言及したら、面接官がそれについてメモを取り始めたりといったことがありました。もちろん、自分の売りなんてふつう多くはありませんから、数少ない売りを全力で押していくというのが基本になるでしょう。また、そのあたりのアピールのやり方については表現技術みたいな話もあると思いますが、それは個々人で鍛えるしかないでしょう。とはいえ、ぶっちゃけ成績関係重視の事務所が多く、「キャラ採用」の事務所なんてほとんどないので、ここで頑張っても空振りすることが多かったりしますが…

しかし、逆に、絶対やってはいけないことは、話を突っ込みようがないくらい抽象的にしてしまうことです。かといって具体的にしすぎると話が冗長になるので、バランスは難しいですが、抽象的になりすぎるよりは具体的過ぎるほうがましだと思いますので、司法試験じゃないですが、「事実を大事に」という戦略で行きましょう。
たとえば、

「私は大学時代、勉強以外でも各種の課外活動に積極的に参加し、コミュニケーション能力を高めました」
「私は大学時代、勉強以外で、サークル活動でバレーをしたり、法律相談のサークルで一般のお客様の相談を一年で10件ほどお受けしました。そこでは、複数の人が同じ方向に向かうというのが難しいということを理解したり、お客様個人個人に合わせて、お話しやすいようお話の伺い方を変えたり、或いは納得していただけるようなお答えの仕方を考えたりというする技術を身につけることができました」


の二つだったらおそらく後者の方がいいと思います。前者は綺麗にまとめている感じはしますが、余りにも抽象的すぎて誰にでも言えてしまう上、中身がなさすぎます。この文章をご覧になって、ほんとにこんなこと言う奴いるのか?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、本番になると誰しも緊張しますし、綺麗にまとめなければならないという先入観が強いのか、或いは何か思い違いをしているのかはわかりませんが、意外とそう言う人はいます。

また、えらく堅苦しく喋る人もいますが、程度問題ではあるものの、余りに堅くしすぎるのもよくないように思います。先に書いたとおり、相手は自分と仕事ができるかどうかを見ている訳ですから、仕事でするくらいの態度で喋ればいいんじゃないでしょうか。僕は事務所のカラー(と自分が判断したもの)に合わせて喋り方を変えていました。たとえばラフな事務所では多少ラフに喋って、時には笑いを取りに行くなど。また、自己紹介を丸暗記して喋る人もいたりしますが、日常生活や仕事においてそんなことはありえないわけで、準備してきたことは伝わっても、相手が見たい能力はわからないでしょう。あと、まれに面接官の先生と対等に渡り合えるとでも思っているかのような尊大な態度を取る人もいますが、自分がどういう立場でそこに立っているのかとか、自分の能力とかを弁えていないという意味で論外です。


h.準備は万全に
最後に、準備は万全にしましょう。
たとえば、当該事務所がどのような業務をやっている事務所なのかとか、どういう歴史を持っているのか、どういった経歴の先生がいて、どのような活動をされているのかといったことは最低限調べて行きましょう。もちろん、それが直ちに役に立つということはありませんが、逆に全く知らないことが露呈したりしたら、こいつうちには興味ないんだなと思われて即終了の可能性があります。また、調べてきたことが役に立ったりすると、相手に好印象を与えることができるでしょう。もちろん、ことさらに調べてきたアピールをするのは鬱陶しいので注意する必要はあります。
僕の場合、説明会に参加されていた先生方の御名前・容貌と話の要旨は全てメモし、次呼ばれた時には、先生方のある程度の経歴や専門分野は調べていきました。それが役に立ったことはあまりなかったですが、逆に説明会に参加されていた先生方の御名前を忘れていたりしたら萎えられると思うので、その程度のことはやるのがよいのではないかと思っています。

また、面接で絶対聞かれることというのは必ず存在しますし、それ以外についてもふつうはESに書いたことが突っ込まれますので、それらについてはある程度喋ることは考えておきましょう。たとえば、法曹の志望理由というのは絶対聞かれることの一つですが、僕の場合は三つにまとめて話の長短を調整できるようにしていました。また、そういう絶対聞かれるようなことについて自分が面接官ならどう聞くかといったことを考えてみれば、一人模擬面接が可能です。模擬面接をやりたいが他の人とやるのはちょっと…*12という方にはお薦めです。

それ以外にも当然ですが、スーツやシャツ、髪型などはなるべく気を遣いましょう。華美なのはよくないですが、汚らしいのはもっと駄目でしょう。ちゃんとクリーニングに出したスーツやシャツを着るのは当然です。


3 まとめ
以上超だらだらまとめてきましたが、弁護士の採用は平均すれば、8割の成績等と2割のコミュ能力や課外活動という印象なので、上のような努力が嫌だとか、人と話すのにあまり自信がないとか、トークにアドリブが効かないという方は、成績を取れるよう頑張るのが無難です。しかし、アドリブが効いて口八丁でないと面接はパスできないものではなく、自分なりに誠意を持ってしっかり自分の想いを伝えればいいようにも思います。面接ではどうしても口八丁のほうが目立ちますが、そればっかりが弁護士に必要な能力ではないでしょう。結局基本は恋愛同様「自分はこういう人間ですが、もしよかったら付き合っていただけませんか?」という姿勢です。あからさまにアピールするのもよくないでしょうが、引きすぎるのもよくないとか、たとえればキリはないですが、現実同様ツンデレはもてません。自分のアピールをするばかりではなく、相手の話も聞いてきちんと応対して、自分ならあなたの期待に応じられるよというのを伝えて行くのがいいと思います。

最後に、余計なひと言ですが、採用側も見られているということは意識してほしかったりしますね。

*1:第三ブロック

*2:http://web.kyoto-inet.or.jp/people/gichi/

*3:http://www.atlegal.jp/

*4:いわゆる四大とTMI、東京青山、シティユーワ

*5:これは多めにみています。ここまで取る事務所はそう多くはありません。

*6:インターンに来る=成績はぼちぼち。東大ではだいたい三分の一より上くらい?

*7:大手でも、インターンをそう捉えていないように思われる事務所はあるようです。

*8:自分が言っても説得力がないのはわかっていますが、そういった採用方法を取っている事務所の内定をもらってそこにそのまま行くというのは、他の事務所の話を聞かないという意味で、機会を逸失しているので必ずしも勝ち組とは言えないのではないかと思っていますが…

*9:上の140という椅子から更にインターン→内定の数を引いた数しかないことになります

*10:とりあえず、サイレントお祈りどころか、書類受領のメールすら返さない事務所が多ことにはちょっと驚きました。こちらが言える立場でないのは承知していますが、コピペでも構わないので、受け取ったかくらいと、お祈りくらいはしてほしいものです。

*11:たとえば企業法務メインの事務所で、ボランティア活動で一般の法律相談をやってきたこと自体や、憲法訴訟や刑事弁護に興味があることをアピールしてもただちにはプラスにはならないでしょう

*12:周りでやっている人もいましたが、大抵彼氏彼女に頼んでいるようです。