司法試験受験回顧

・総括
想像以上にハードな試験。いつも試験中淡々と問題を解く自分が生まれて初めて頭が真っ白になった、と言えばわかりやすいかもしれない。単純に準備不足で解けなかったというのが大きいけれども、精神的肉体的な疲弊も一因。あとは、直前期の使い方がまずかった。直前期はもっと択一に時間を割くべきだったというのが最大の反省点。知識があいまいだと本番ほんっとに辛い。

・試験スケジュールとか会場とか(ちなみにこれが受験票)


見えにくいかな?
着席時刻には会場の自席にいなければいけませんが、集合時刻に行く必要はない模様。自分は大体着席時刻の15分前くらいに座っているような時間に会場入りしていた。会場によると思うけど、うちの会場はエレベーターなどの関係上、会場に着いてから席に着くまで10分弱かかったりということがあったので、一日目はなるべく早めに行っておくのが吉かと。
机は二人で一つの長机、ただ自分は幸運にも隣が受け控えで不在。椅子はふつうのパイプ椅子で、座席部分クッションが安物のそれよりは多少いいかというようなもの。座布団をもちこんでいる人もちらほら。
監督は京大カンニングを受けてか厳しい。トイレは今年より建前上禁止。とはいえ、やむをえない場合を除くらしいので実質的にはそれ以前と変わっていないし、実際トイレに行っている人もいた。
会場は浜松町。選択科目によって振り分けがある程度あるようで、浜松町は労働法と知財だったようです。とはいえ、他の会場にも労働知財はいるので、よくはわかりませんが。
試験時間は一日目7時間、二日目6時間、三日目休み、四日目4時間、五日目5時間半、計22時間半。


・試験前思ってたこと
圧倒的な勉強時間不足で、まず受からないだろう。論文の鬼門は、論文を書いた絶対数が少ない選択科目の労働法、いまいちよくわからない行政法、各論が苦手な刑法あたり。択一は、まあ足切りは大丈夫だろうし、配点も低いから論文勝負か。

・一日目
前日就寝は二時。ぎりぎりまで労働法をやっていた。
起床は七時過ぎ。寝ブッチして焦る夢で目が覚めた。
会場には8:50到着。地元のコンビニで昼ごはんまで買っておいた。また、試験中の飲料としては、ペットボトルのお茶とコーヒーを準備。

一科目目労働法。
まさかの時事問題、のトラック運転手の事故。見た感じふつうの問題だったので、特にきっちり構成や図を書いたりすることもなく淡々と解いたが、二問目の最後の方で論点飛ばしをしそうになったことからすると、やはりまだ頭が温まってなかったのかもしれない。

二科目目公法第一問。
まさかの時事問題?のストリートビュー憲法論文は久しぶりだったのでちょっと感覚が鈍っていたのか、書きだしが遅れた。出題者の問題意識もきちんと拾いきれた気はしない。

三科目目公法第二問。
このあたりから右手親指が痛くなってくる。出題は原告適格一択だろ!とか言ってたらほんとにそうだったし、元ネタ判例も知っていたが、それを知っているだけで解ける問題の訳はなく、しかも問題数多すぎて書き終わらなかった。

全科目終了後は、翌日が民事だからきっちり復習するつもりだったが、正直そんな気力はどこにもなく、日付変わる前にさっさと寝た。

・二日目
体調があまりすぐれない。しかしちゃんと起きて、着席時刻の15分前くらいに到着。
とりあえず親指が痛い。

一科目目民事第一問。
こてこての民法問題だが、事例が相変わらず長い上、設問も書くことも、そしてそのジャンルも多い。ここで初めて下書き用紙?を使用。構成まである程度考えて書いた。この問題に関してはいい問題で大変楽しく解いたが、一番最後の設問はほとんど時間が足りずたいしたことは書けないまま終わってしまった。

二科目目民事第二問。
会社法だが、自己株式という変化球でまず焦る。貸借対照表を真面目に読んで時間をロスする。更に設問の一番最初の問いにて、ある論点でひっかかったというか考えが深みにはまった。ひっかかるというのは要するに勉強不足で考え方をわかっていないということなのだが、試験中十分以上悩み、それがあとに引きづって圧倒的に時間不足。あげくその後の解答は相当筋が悪いものになってしまい、初めてこけたことを自分で認識した科目を作ってしまった(それ以前の科目が客観的にできているかどうかはもちろん別の問題)。

三科目目民事第三問。
共同訴訟参加とかまじですかwwwってなって、仕方ないから、共同訴訟参加の典型例を書いて、そこから趣旨を逆探知するという勉強不足を補う工夫をする羽目にwwとはいえ、この科目については論点はある程度拾えたし、時間も足りて書き終えられた。

終了後、もう頭も体もフラフラ。とりあえずゾンビのような感じで家まで帰り、いつもの中華料理屋で栄養を取ろうと思ってレバニラ食って帰る。

・三日目
疲れて身体も頭もまったく働かなさ過ぎて笑った。昼過ぎまで寝て、起きてからは判例六法をひたすら読んだ。

・四日目
前夜、テンションがあがってしまったのか、夜眠れなくなってしまい、三時間弱の睡眠時間で、頭の回転が求められる刑事系に突っ込むという無謀な挑戦。実際これがあとで響く。

一科目目刑事第一問。
問題開けて、ちょw演習刑法第一問wwとか思ったのに、それに関する論点は思いっきりこけるという謎なことをしてしまう。とりあえず総論の問題で安心した。自分の中では一本筋の通った答案を、時間前に書き終えられてぼちぼち。

二科目目刑事第二問。
と思いきや、この科目でやらかした。まず、書く量が異様に多い上、後半でちょっと予想していなかった(ここんとこずっと出ていたので、今年は訴因だと思い込んでいた)証拠が出て動揺した。それくらいだと別に問題なかったのだが、眠気で頭が働かなくなり、更に前半の捜査で時間を取られ過ぎ、証拠が壊滅した。ほとんど量書けていない上に、論点も指摘できていない。それどころか、後半の小問2に至っては、問題意識すらよくよく掴めなかった。会社法に引き続きやらかした科目となった。刑訴の証拠でやらかしたのは、東大ロー一回目受験の時とまったく同じパターンで、その時はそれが原因で不合格となっていたため、非常に嫌な感じになる。

そしてこの日は疲れ果てているからよく眠れるはず…だったのだが、それが眠れない。妙に気持ちと身体が高ぶっている感じで、疲れはあるのに頭が寝てくれない。

・五日目
結局五時間くらい寝て会場へ。普段は疲れて寝不足でも、試験問題を前にすればしゃきっとするのだが、さすがに疲労の蓄積が違うのか、頭がぼーっとしている。
会場入ろうとしたら、緑のエナメルバッグをもった派手な方が入り口横に。久保利先生だったw思わずイヤホンを外して挨拶。先生に爽やかな挨拶をして頂いてちょっと明るい気分になる。

民事択一。
民法まではまだよかった。が、会社が妙に出来ない。それどころか、会社の終わりくらいから頭の回転が異常に遅くなってしまい、焦りが高まる。時計は三問解くごとに見ているので、時間に余裕があるのはわかっているのだが、走馬灯のようなものすら見え始め、明らかに気が散っているレベルを通り越して物思いに耽るという意味不明な状態に陥ってしまう。さすがに15分くらいで気を取り戻して解き始めたのだが、民訴も異様に出来ない。この時点で択一落ちがものすごく現実的に思えてきはじめる。

公法択一。
憲法はまあいつも通り。しかし行政法で散った。見たことない肢が平気であったりして、気がめいった。途中で司法浪人した場合の生活費の計算や、実家に帰るかどうかの検討すら始める始末。ここも再び気を取り戻し最後まで解いたが、もう敗戦処理投手の気分。

刑事択一。
周りの話では時間が足りなかったらしい。自分は解くペースを常に確認し、見切りで解くようにしたのでそういうことはなかった。刑訴もえええ的な問題が多かったが、公法の時点で択一落ちを確信していたので逆に開き直って淡々と解いた。

そしてついに22時間半の試験終了。
実に解放感がない。ここ数日一緒に会場から東京駅まで帰っていた同クラと、東京駅でちょっとだべって、落ちたかなあという会話。個人的にはその彼は絶対に落ちないと思うのだが…自分はなんかもうある意味あっけらかんとした感じで、彼と別れた後は、終わったら終わったでやることを決めていたことに取りかかるため、丸善で本を一万円分くらい買う。その後彼女と合流し、有楽町の韓国料理屋で死ぬほど飯食って帰宅。彼女にダメぽと言っても別に驚かれなかった所が全てかもしれないw

・試験後思ったこと
落ちた。択一落ちでFA。
会場の下見はしておいたほうがいい。自分の場合は、下見に行った人に色々教えてもらってコンビニの数やら周りのカフェや弁当屋の数とか知っていたけど、初日駅の出口を間違えて焦ったりしたので、行っておくと何かと安心。浜松町会場のトイレの少なさは異常、とか知っておくといいだろうしw

疲れた。やはり試験期間中は、なまじ勉強するより、体調を最優先すべき。もちろんそんなことわかってはいたが、勉強不足を自覚していると、勉強をあきらめて寝るのは意外と難しい。

みんな言っているが、試験が終わったという解放感がゼロ。ここまで解放感がなかった試験は初めて。そして、試験前は落ちてもしゃあないなあと思っていたが、試験中、こんな試験二度と受けたくないという思いから合格したいという思いが強くなった(逆に言うとそれだけしんどい試験。

論文では反省点は特にない。時間の使い方がまずいと思われたところは途中で修正できたけれど、それがうまくいかなかった科目は書き終わらなかったり論点落としたりすることに繋がったというだけ。

択一は反省点しかない。これは最も言いたいことなのだが、論文をがりがり三日やると、リアルに択一が抜ける。もちろんこれは自分が択一をいい加減にやってたからというのもあるだろうが、それにしても恐ろしいほど択一の頭が働かず、疲労と相まって、前述の通り民事択一の途中十五分ほどぼーっとしていた。

・締め
この二年半ほどは自分にとって暗黒な期間だったが、どうも法律の勉強自体は嫌いではないらしいということをここ数カ月再確認できたことだけは収穫。丸善で、気付いたら法律コーナーの新刊をチェックしている自分、気付いたらジュリストと法学教室を買っている自分。それでもそれを阻却して余りあるマイナスポイントが前途には転がっているのだが、それでもなお大量なコストを払い、リスクを引き受けこの道を続けるのか。コストとリスクのみならず、必ずしも向いていない道を選ぶことで生じる自己嫌悪といった感情とも向き合えるのか。自問自答は続くだろうが、答えは出ているのかもしれない。

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